高校生が見ても大人が見ても分かるような書き方にしています。
情報Ⅰを学ぶ皆様へ
情報Ⅰ令和4年度から順次施行しています.
(これは令和4年4月に入学する生徒から授業で学ぶということであり,何年次で学ぶかは学校によって異なります.)
(2019年に作成した画像です.社会と情報/情報の科学 を補足して右端まで伸ばすべきでした.)
2単位の授業であり,高校3年間の間に週2回1年分の情報の授業を受けなければならないといった感じです.
情報Ⅰを語る上で最初に見ておきたいこと
学習指導要領と教員研修用教材です。学習指導要領は文部科学省が作成公開しているもので,全国の学校はこれに基づいて指導しています。指導要領は施行の5年前に公開され,その後教科書会社が教科書を作ったり,他の先生方が教える準備をするなどの猶予があります。情報科についてはその期間に教員研修用教材を2種類アップされました。情報Ⅰと情報Ⅱについてです。これは教員向けの教材ですが,高校生が見ても勉強になるものです。
情報入試について
共通テストの情報Ⅰを使用する大学
順次発表されています.(あまりよい表現ではありませんが)有名所は割と採用する印象です.各大学が個別にWebサイトで公開しています.すべて調査するのは大変で当サイト管理人は諦めました。
ELDI事務局様のnoteで収集したデータを公開されていますのでリンクを載せます.
少しだけ資料を集めました
国立大学協会の発表
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大学入試センターの発表
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情報Ⅰで学ぶこと
先に示した文部科学省の高等学校学習指導要領(平成30年告示)に従って全てが作られますから,まずはそれを参照するとよいですが,そこから学ぶ内容のタイトル部分だけ抜粋します.
- 情報社会の問題解決
- コミュニケーションと情報デザイン
- コンピュータとプログラミング
- 情報通信ネットワークとデータの活用
4つの柱と言われますが,よく見ると「と」や「の」で接続されています.ですから分割すると8つの分野のことを学び,しかも中身を見るとさらに細分化できます.
情報社会の問題解決
学習指導要領を本サイト管理人なりに噛み砕くと
- 情報とメディアの特性を知る
- 情報社会の仕組みや問題点を考えられるようになる(社会的な視点を中心に)
- 情報関連の法規や制度,情報モラルについて理解する
- それらの知識を使って,自分なりの解決策を導き出せる
- 解決策を導き出すための問題解決手法を身につける
※ 生徒が主体的に発見するよう促す
コミュニケーションと情報デザイン
学習指導要領を本サイト管理人なりに噛み砕くと
- メディアの特性,その歴史や変遷を理解する(歴史勉強)
- コミュニケーション手段の歴史や変遷を理解する(歴史勉強)
- 世間の情報の伝え方(デザイン)を見て,役割を考察できる
- コミュニケーション形態をメタに捉えて,適切な伝達手段を考えられる
- 学習者が既存の方法や理論に基づいて考えついた手段で表現して,それを評価し改善できる
※ユニバーサルデザインを取り扱う
コミュニケーションと情報デザイン
学習指導要領を本サイト管理人なりに噛み砕くと
- メディアの特性,その歴史や変遷を理解する(歴史勉強)
- コミュニケーション手段の歴史や変遷を理解する(歴史勉強)
- 世間の情報の伝え方(デザイン)を見て,役割を考察できる
- コミュニケーション形態をメタに捉えて,適切な伝達手段を考えられる
- 学習者が既存の方法や理論に基づいて考えついた手段で表現して,それを評価し改善できる
※ユニバーサルデザインを取り扱う
情報通信ネットワークとデータの活用
学習指導要領を本サイト管理人なりに噛み砕くと
- 情報通信ネットワークの仕組み,構成要素,プロトコルの役割を理解する(がっつりCS知識)
- 情報セキュリティの方法技術を理解する(がっつりCS,おそらく暗号化 等 程度)
- (情報システムを浅くふわりと把握する)
- (データベースの仕組みを理解する)
- それらを習得した上で活用し評価改善する
※小規模ネットワーク設計の活動を取り入れる
各種メディアの報道について
プログラミング教育にばかり着目する
ニュース報道の大半では「プログラミングを含む情報Ⅰ」といった報道のされ方をする.これまで教科情報ではプログラミングも一部取り扱ってきた.それが拡大するだけであるためそこまで語気を強める必要はないだろう.数学Bで扱っていたベクトルが数学Ⅰで扱うようになり誰もが学ぶようになるような程度の話である(たとえ話であり,数Ⅰでベクトルを扱う事実はない).
しかし鬼の首を取ったように「プログラミングが!!」と言われている.実はもっと重大な問題があり,これまでに扱われていなかった単元が導入されることになった.そちらに対応することが急務だろう.
情報デザイン
新たな単元の一つである.デザインといった言葉の解釈が正確にできていない人が多い.当たり前だ,定義がぶれすぎている.ただ,いずれをとってもこれは「なにかを解決するための設計」といった文脈で語られる.設計のための基礎的な知識は新規に習得する必要がある.これまで専門教科情報では情報デザインといった科目があるが,普通教科にしか目をやっていない先生方は,これまでにないことを教えなければならない.プログラミングは採択率の低い選択必修科目であった情報の科学でも取り扱っておりますし,社会と情報を採択している学校でもプログラミングを取り扱っている事例もある.
ただし指導要領に近い内容での情報デザインは完全に新規の単元であるため準備が必要だろう.プログラミング教育の心配以上に情報デザインに対する心配をしている.
データの活用
新たな単元の一つである.前回の指導要領改定で数学Ⅰに新規追加された単元であるデータ分析と似た内容である.ただし多量のデータを一括処理したり,オープンデータとの連携など様々な処理をコンピュータを用いて実施することが前提として設計されている.詳細な紹介はここでは省くが,いずれもまず数Ⅰ程度のデータ分析を理解している前提であるだろう.先生たちの中にはこのデータ分析関連の内容のほとんどをスルーしている人もいる.すなわち情報デザインと同じようなことを懸念している.
情報科の授業について述べるときに「数学の請負でコンピュータ教室にしてはならない」という旨主張しているが,数学の請負コンピュータ教室にすることすらままならないことを懸念している.
また「情報」の文脈におけるデータ活用の授業を提案しなければならないだろう.
必履修科目
必修科目や必修化などと言われるが,正確には必履修である.また教科情報が必修化など言われるが,これまでも情報は必履修であった.ただしこれまでは「社会と情報」か「情報の科学」のどちらかを履修すればよかった.これを選択必履修科目と呼んでいた.
教科「情報」科目「情報Ⅰ」「情報Ⅱ」が設定され,「情報Ⅰ」が必履修科目,「情報Ⅱ」が選択履修科目である.
砕いて表現すれば,教科情報が大枠,その中に情報Ⅰと情報Ⅱがあり,情報Ⅰは全員学ばなければならない,情報Ⅱは学校で開講していれば学ぶ科目である.
例えるなら,数学の中に「数学Ⅰ」「数学A」「数学Ⅱ」「数学B」「数学Ⅲ」があり,数学Ⅰと数学Aは全員学ぶ,ほかは学ぶところと学ばないところがあっていいよ.
といった感じでしょう.
ちなみに必修と必履修の違いはこのサイトの対談を参考に書きます.2006年の記事ですが,この悪い状況は2022年1月現在もまだまだ続いており,2022年度から始まる情報Ⅰの不安材料の原点はここにあることが分かります.
必修と必履修の違い
日経xtech 高校でなぜ未履修が起きるのか—「情報」未履修問題を考える
必修:必ず満足ができる成果をだすこと。
必履修:必ず授業を受けること。