統計学習アプリ・教員向け

授業で使うために

本アプリケーションには、全単元を自由に操作する個人学習モードと、授業者が提示範囲を制御する授業モードがあります。

このページについて

本ページは、第19回全国高等学校情報教育研究会全国大会で発表した「『試して考える』統計学習アプリケーションの開発」に、授業利用の観点を補う教員向けページです。

授業での使用

大学での使用と高校「情報Ⅰ」との対応

本アプリケーションは、大学の数理・データサイエンス・AI教育(リテラシーレベル)の統計導入で使用しました。授業では、代表値、散らばり、度数分布、相関を扱いました。これらは、高校「情報Ⅰ」の「データの活用」にも含まれる内容です。このページには、大学で実施した授業の流れと、高校情報科で利用する際の操作方法を掲載しています。

学校段階をまたいで扱う統計

代表値、散らばり、度数分布、相関は、中学校、高校、大学で繰り返し扱います。学校段階が上がるにつれて、計算手続きの確認から、データを操作して結果を予想し、数値とグラフの関係を説明する学習へ広がります。本教材では、数学で学ぶ計算と情報科のデータ活用を同じ画面で扱います。

学校段階の接続について読む
01

二つの利用方法

個人学習ではすべてを公開し、授業では授業者が使える内容を順に開きます。

個人学習モード

すべての単元・機能を使う

学習者が数値や条件を自由に変え、グラフと統計量の変化を確かめます。

授業の途中で、段階提示から自由操作へ切り替えられます。

02

本アプリケーションで扱う学習内容

代表値から推定・検定の考え方までを、10の単元に整理しています。

01データと代表値平均値・中央値・最頻値
学ぶ内容
平均値、中央値、最頻値が、データのどのような特徴を代表しているかを比較します。
アプリの構成
数直線上の点を動かすと、データと各代表値が同時に変化します。
試してほしいこと
一つの値だけを大きく動かし、影響を受けやすい代表値と受けにくい代表値を確認してください。
02クラスの点数を比べる偏差・分散・標準偏差
学ぶ内容
平均値だけでは表せないデータの散らばりを、偏差、分散、標準偏差によって数量化します。
アプリの構成
点数分布と平均からの距離を対応させ、二つのクラスの分布を比較できます。
試してほしいこと
平均値がほぼ同じで散らばり方が異なるデータを作り、標準偏差がどのように変わるかを確かめてください。
03度数分布とヒストグラム階級・度数・分布の形
学ぶ内容
個々のデータを階級ごとに集計し、度数分布表とヒストグラムで全体の傾向を捉えます。
アプリの構成
40人分の点数をもとに、階級の設定、度数分布表、ヒストグラムを連動して表示します。
試してほしいこと
階級幅や階級の境界を変え、同じデータでも分布の見え方が変化することを確認してください。
04四分位数と箱ひげ図五数要約・データ群の比較
学ぶ内容
最小値、第1四分位数、中央値、第3四分位数、最大値によってデータの分布を要約します。
アプリの構成
データ、五数要約、箱ひげ図を対応させ、二つの組の分布を重ねて比較できます。
試してほしいこと
中央値が近い二つのデータを比較し、箱の位置、長さ、ひげから読み取れる違いを説明してください。
05データの変換一次変換と統計量
学ぶ内容
すべてのデータを同じ規則で一次変換したとき、平均値や標準偏差がどのように変化するかを考えます。
アプリの構成
変換式 y=ax+b の係数を操作し、変換前後のデータと統計量を同じ画面で比較します。
試してほしいこと
aとbを個別に変更し、値の加算と倍率の変更が平均値・散らばりへ及ぼす影響を区別してください。
06散布図と相関二変量データ・相関係数
学ぶ内容
二つの量の関係を散布図で表し、点の配置と相関係数との関係を捉えます。
アプリの構成
勉強時間と得点の組を点として表示し、点を動かすと相関係数が変化します。
試してほしいこと
正の相関、負の相関、相関がほとんどない配置を作り、外れた一点の影響も確認してください。
07乱数シミュレーションと大数の法則相対度数・試行回数
学ぶ内容
偶然に左右される一回ごとの結果と、試行を重ねたときの相対度数の安定を区別します。
アプリの構成
コイン投げなどの試行を繰り返し、結果の回数と相対度数の推移を表示します。
試してほしいこと
少ない試行と多い試行を比較し、試行回数が増えるほど割合がどのように推移するかを観察してください。
08確率分布二項分布・正規分布
学ぶ内容
確率変数の値と確率の対応を分布として表し、確率をグラフ上の面積として捉えます。
アプリの構成
二項分布と正規分布のパラメータを変更し、分布の形と区間確率を連動して表示します。
試してほしいこと
試行回数、成功確率、平均、標準偏差を変え、分布の中心・広がり・形の変化を比較してください。
09標本平均の分布母集団・標本・標本平均
学ぶ内容
母集団から標本を繰り返し抽出し、標本平均そのものにも分布が生じることを学びます。
アプリの構成
母集団の形と標本の大きさを設定し、反復抽出によって標本平均のヒストグラムを生成します。
試してほしいこと
標本の大きさを変え、標本平均の中心と散らばりがどのように変化するかを確認してください。
10推定と検定の考え方標本から母集団を考える
学ぶ内容
一部の標本から母集団の特徴を推測し、観察された差が偶然によるものかを検討する基本的な見方を学びます。
アプリの構成
母集団と標本の関係を図示し、条件を変えながら推定・検定の判断過程を段階的に確認します。
試してほしいこと
標本の結果だけで断定せず、標本の大きさ、ばらつき、偶然に生じる可能性を含めて結論を考えてください。
03

授業進行と提示範囲の制御

授業者が公開する単元と操作範囲をリアルタイムに変更する機能を試作しています。

操作結果は画面へすぐ反映されます。授業中は、学習者が説明より先へ進んだり、課題とは別の操作に注意を向けたりすることがあります。このため、授業の進行に合わせて公開範囲を切り替え、一斉に確認する時間と自由に操作する時間を分けています。

  • 説明中は、今扱う機能だけを公開する
  • 予想を共有してから、操作できる範囲を広げる
  • 確認後は制限を外し、自由な発見へ移る

授業中の表示

授業者の操作を学習者側の公開範囲へ反映する

授業者は進行コンソールから次の場面を一斉に解放します。学習者側では、公開前の内容を操作できない状態にし、解放されたときだけ次のページへの案内を強調します。

授業進行コンソール。授業ID、現在の進行位置、次に解放する場面、一つ戻す・全解放などの操作が表示されている
授業者側:進行コンソール授業全体の進行位置を確認し、次の場面を一斉に解放します。必要に応じて一つ前へ戻す、最初からやり直す、全内容を解放する操作も行えます。
学習者側のモジュール一覧。01から06までが公開され、07以降は灰色のロック状態で表示されている
学習者側:途中まで公開されたモジュール一覧一斉制御で公開した01から06までは利用でき、授業でまだ扱っていない07以降はロックされています。
散布図と相関の学習画面。右下の次のページへの移動欄が、先生の合図を待つロック状態になっている
解放前相関の操作中は、右下に「先生の合図を待ってね」と表示され、次のページへは進めません。
散布図と相関の学習画面。次のページが解放され、右下の案内がオレンジ色で強調されている
解放後授業者が次の場面を解放すると、右下の案内がオレンジ色になり、次へ進めることを学習者へ知らせます。
04

授業全体の利用手順

学習目標と扱う内容を決め、全体提示、個別操作、自由探索の順に進めます。

  1. 全体で確認する

    教室前方の画面で操作し、問いと変化を全員で共有します。

  2. 課題を示して個別に試す

    見る項目と考える問いを示した後、各自の端末で操作します。

  3. 制限を外して自由探索へ移る

    授業で扱った内容を確認してから、別の変化や規則を探します。

各用語で繰り返す流れ

予想、操作、解説、自由操作を繰り返す

代表値、分散、標準偏差、相関など、新しい用語ごとに、予想から自由操作までを繰り返します。

  1. 問いを確認する
  2. 結果を予想する
  3. 操作して確かめる
  4. 解説で整理する
  5. 自由に試す

次の用語でも繰り返す

第19回全国高等学校情報教育研究会全国大会のポスター発表では、アプリケーションの開発と学習内容を紹介しました。授業者による制御と授業への組み込みは、ポスターセッションの質疑で補足した内容をもとに整理しています。

05

授業実践・指導案

大学初年次の授業記録から、統計の導入とアプリを使用した約47分間を再構成しました。

実践記録

数理・データサイエンス・AI教育(リテラシーレベル)の第14回で実施した内容です。文字起こしのうち、試験説明、小テスト、事務連絡、雑談を除き、統計の導入とアプリ操作に関する部分だけを整理しています。

対象
大学1年生
位置づけ
統計の導入・既習事項の再構成
授業時間
90分授業のうち約47分
利用形態
一斉説明と一人一台端末での操作

授業の中心

統計量が何を表すのかを捉える

平均、分散、標準偏差などの計算はコンピュータが担います。学習者はデータを動かし、数値とグラフの変化を観察しながら、それぞれの統計量が何を表しているのかを説明します。

  • 平均値だけでは分布の特徴を十分に表せないことを説明できる
  • 偏差から分散・標準偏差を求める意味を、散らばりと対応させて捉える
  • ヒストグラム、箱ひげ図、散布図からデータの特徴を読み取る
  • 試行回数を増やしたときの相対度数の安定を、シミュレーションから説明する

授業展開

実際の発問と画面操作

統計の導入を0:00とした経過時間です。各段階で必要な画面だけを公開し、最後に全機能を開放しました。

  1. 導入①

    既習語を意味から問い直し、答えの止まる地点まで進む

    発問:「平均とは何ですか。足して個数で割る、は計算方法です。何を表す値ですか」

    平均、中央値、最頻値、四分位数、分散、標準偏差、相関係数、散布図、共分散、変量変換、仮平均の順に、同じ問い方で確認します。反応が止まる地点まで意図的に進め、計算はできても意味を説明できない状態を全体で共有します。

  2. 導入②

    計算をコンピュータに任せ、統計量の意味を考える

    発問:「computerを日本語にすると何ですか。computeはどういう意味ですか」

    computeが「計算する」であること、-erの付いたcomputerが本来は「計算手」という職業を指していたこと、ENIACなどの登場によってその仕事が機械に置き換えられたことを確認します。

    本時の課題:計算手順はコンピュータに任せ、出力された統計量が何を表すのかを読み取り、説明します。

  3. 平均

    同じ平均をもつ異なるデータを作る

    課題:「人数や各人の得点を動かし、平均60点のクラスを作ってください」

    操作:グラフ上の青い丸は、一人分のデータを表します。丸を左右へドラッグすると、横方向の位置に応じた点数が丸の上に表示され、平均値もその場で更新されます。

    完成した画面を、周囲の人が作った画面と比較します。同じ平均60点でも、全員が60点に近い場合と、得点が大きく散らばる場合があります。平均が同じでも分布は異なることを確認します。

    得点をドラッグして平均60点のクラスを作る学習画面。平均、最頻値、データ数と各得点が同時に表示されている
    平均60点になる得点の並びを各自で作り、周囲の人が作った画面と比較します。
  4. 散らばり

    偏差から分散・標準偏差を組み立てる

    発問:「平均が同じ二つのクラスの、散らばりの違いを数で表すにはどうすればよいですか」

    平均からの差を表示し、その平均が0になることを確かめます。正の値にそろえる方法として、まず絶対値を検討します。場合分けが必要で扱いにくいことを確認したうえで2乗を選び、その平均を分散、さらに平方根をとった値を標準偏差として、画面上の散らばりと対応させます。自由実験では、2乗値を面積として可視化します。

  5. ヒストグラム

    階級の設定で分布の見え方が変わる

    操作:階級幅と階級の開始位置を変更します。

    身長データを階級にまとめ、どの範囲に何人いるかを読み取ります。同じデータでも階級幅や境界によって見え方が変わること、量的データの連続性を表すため棒の間に隙間を設けないことを確認します。

  6. 箱ひげ図

    分布を五つの値で要約する

    発問:「箱とひげの各部分には、データのどの範囲の人が含まれていますか」

    操作:下段の青い丸は、A組の一人分の得点を表します。丸を左右へドラッグすると得点の分布が変わり、ヒストグラム、中央値、四分位数、箱ひげ図が同時に更新されます。

    ヒストグラムと箱ひげ図を対応させ、中央値、四分位数、最大値・最小値を確認します。A組とB組を比較し、データを動かしたときの箱とひげの変化を観察します。一つだけ大きく離れた値については、その値が生じた理由も検討します。

    箱ひげ図の学習画面。A組とB組の箱ひげ図、A組のヒストグラム、一人分の得点を表す青い丸が表示されている
    下段の青い丸を左右へ動かし、一人分の得点、ヒストグラム、箱ひげ図が連動して変化する様子を確認します。
  7. 散布図・相関

    二つの量の関係を点の配置から読む

    発問:「最初に横軸と縦軸を確認してください。何と何の関係を表していますか」

    勉強時間と得点などの散布図を読み、正の相関・負の相関・ほとんど相関がない配置を比較します。回帰直線と各軸の平均を表示し、点を動かして相関係数の変化を観察します。相関係数が−1から1の範囲をとることも確認します。

    勉強時間とテスト得点の散布図で点を動かし、相関係数と回帰直線の変化を確かめる画面
    点を動かし、散布図の形、回帰直線、相関係数の変化を同じ画面で確認します。
  8. 乱数

    試行回数と相対度数の安定を観察する

    課題:コイン投げを10回、100回、1000回と繰り返し、表の割合の推移を比較します。

    操作:最初はコインを一回ずつ投げ、10回分の結果を記録します。その後は乱数シミュレーションを使い、10回分をまとめて100回まで試し、さらに100回・1000回の試行を実行します。

    表が出る理論上の確率を0.5とし、試行回数ごとの相対度数と比較します。試行回数を増やすたびに必ず理論値へ近づくわけではありませんが、相対度数の大きな揺れが小さくなり、0.5の周辺で安定する傾向を確認します。これは、大数の法則を乱数シミュレーションで確かめる活動です。

    発展:この活動は、現象を確率モデルで表し、モデルから予想される理論値とシミュレーション結果を比較する学習につながります。結果が理論値と大きく異なる場合は、試行回数やモデルの仮定が適切かを検討します。

    コイン投げを10回ずつ乱数で実行し、100回までの表と裏、累計回数、相対度数を記録する画面
    10回分の結果を一段として、100回までの表と裏、累計回数、相対度数を記録します。
    コイン投げを1000回実行し、表の相対度数の推移を理論値0.5と比較する画面
    10回・100回・1000回の試行を行い、表の相対度数の推移を理論値0.5と比較します。
  9. まとめ

    全機能を開放し、自由探索へ

    授業中に扱わなかった機能を含めて公開し、学習者が関心をもった内容を自由に試します。

実践から確認できたこと

「作って比べる」課題を説明に用いる

平均60点を作る課題では、学習者ごとに異なる分布が生まれました。互いの画面を比較し、平均が同じでも散らばりは異なることを確認しました。

授業運用上の留意点

公開範囲と発問で操作の焦点をそろえる

操作結果がすぐ表示されるため、説明前に次の操作へ進む場面がありました。一斉に検討するときは公開機能を限定し、予想と理由を共有してから操作を開放します。

この扱いを選ぶ理由

用語と数値の意味を対応させる

過去の卒業研究の指導では、相関係数という用語を知っていても、値が−1から1の範囲をとることを把握せず、「相関係数は7」と記述した例がありました。このため、値を動かし、相関係数の範囲と意味を確かめる操作を取り入れました。

既習状況の差への対応

高校での学習状況が異なることを前提に置く

受講者の高校での学習状況には差があります。高校で扱った内容を改めて扱う理由として、文系・理系を問わず必要になる基礎的な内容であることを先に示しました。既習者には意味の言語化を、未習者には操作による理解を求め、同じ教材を使用しました。

本時で扱わなかった内容

発展単元は別の授業で扱う

データの変換は画面を紹介するだけにとどめました。確率分布、標本平均、推定・検定は詳しく扱っていません。仮説検定については、乱数シミュレーションを通して、結果が偶然に生じる可能性を考えるところまで扱いました。

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