文部科学省は2026年7月30日、「情報活用能力の抜本的向上を支える指導体制改善プラン」の更新版を、中央教育審議会の情報・技術ワーキンググループ資料として公表しました。2025年9月25日に作られた計画を、次期学習指導要領に向けた審議の進行に合わせて更新したものです。

この資料が扱うのは、教材開発、教員研修、免許状、外部人材、指導方法、設備などの条件整備と年度工程です。次期学習指導要領の教科名や授業内容は、中央教育審議会で別に審議されています。

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国が教育委員会、学校、関係機関と連携し、次期学習指導要領の全面実施までに必要な条件整備を進める計画です。施策は次の3本柱で構成されています。

  1. 01研修等の充実担当教員の指導力向上、研修動画、研修情報の集約
  2. 02指導体制の確立学習者用教材、外部人材、複数校指導、遠隔授業
  3. 03免許状所有状況の改善認定講習、養成課程、特別免許状、免許制度の検討

施策開始研修、教材開発、認定講習などは2026年度から順次実施します。

2028年度目標中学校技術分野の臨時免許状所有者・免許外教科担任を全自治体でゼロにする目標です。

全面実施の見通し小学校2030年度、中学校2031年度、高校2032年度入学生から。日程は変更される可能性があります。

担当・免許状別の施策

資料に掲載された研修、教材、指導体制、免許状に関する施策を、対象別に整理します。

  1. 01研修研修動画、説明会、担当教員向け研修
  2. 02教材・設備学習者用教材、PC教室、3Dプリンター
  3. 03指導体制外部人材、複数校指導、遠隔授業、支援スタッフ
  4. 04免許状認定講習、養成課程、特例制度、新制度の検討

中学校技術分野の担当教員

  • 研修:2026年度から研修動画を一部提供し、2028年度末までに全ての情報・技術科担当教員を対象とする研修を実施する計画です。
  • 教材:授業動画を含む学習者用教材を2026年度から開発し、実践・検証後も随時更新します。
  • 免許状:中学校技術二種免許状に必要な13単位を履修できるオンライン中心の免許法認定講習を2026年度から実施します。
  • 設備:PC教室の在り方を2027年度までに整理し、3Dプリンターなどの整備促進策を検討します。

2028年度までに、中学校技術分野の臨時免許状所有者・免許外教科担任を全自治体でゼロにする目標が示されています。

高校情報科の担当教員

  • 研修:授業で使える動画教材の網羅的な作成と、情報科担当教員の指導力向上に関する研修支援を行う予定です。
  • 情報Ⅱ:研修動画の活用、設置校の指導事例の周知、情報Ⅱの設置促進を検討します。
  • 教育課程:高校情報科の柔軟な教育課程編成に関する事例の周知・啓発と伴走支援を検討します。
  • 生成AI:初等中等教育段階の生成AI利活用ガイドラインを2026年度中に改定する計画です。

高校「情報」の普通免許状には、中学校技術科の「情報の技術」に関する事項を担当できる現行の特例があります。

全校種情報教育に関わる教員

  • 最新技術:SNS上の誹謗中傷や犯罪などを含む、最新の情報技術に関する教員向け研修教材とオンライン研修を作成します。
  • 情報集約:教材・研修情報を一元的に閲覧できる総合サイトの構築を検討します。
  • 学校種間連携:情報教育を担当する教員を学校種間で派遣する事例の展開を検討します。
  • AI活用:AIを含む情報技術が深い学びにつながる事例と、つながりにくい事例を周知します。

運営・支援教育委員会・管理職・外部人材

  • 研修:都道府県教育委員会と国が連携し、説明会、担当教員向け研修、地域の指導者育成を進めます。
  • 人員:複数校指導、遠隔授業、支援スタッフ、民間企業などの外部人材活用を検討・実施します。
  • 免許状:中学校技術分野の指導体制改善計画をフォローアップし、免許法認定講習の受講機会を拡大します。
  • 専門人材:中学技術・高校情報の特別免許状の授与促進と、特別非常勤講師の活用を検討します。

免許状に関する現行制度と検討事項

中学「技術」普通免許中学校技術分野を担当現行制度
高校「情報」普通免許中学「情報の技術」の担当特例/追加9単位で中学技術二種現行制度
高校「工業」普通免許追加9単位で中学技術二種現行制度
民間企業などの専門人材特別免許状・特別非常勤講師の活用促進検討中
  1. 13単位の認定講習:中学校技術二種免許状に必要な単位を最短1年で履修できるオンライン中心の講習です。実習は対面で行います。
  2. 高校情報免許の特例:中学校技術科の「情報の技術」に関する事項を担当できる現行制度です。
  3. 追加9単位の制度:高校情報または高校工業の普通免許状所有者が、教育職員検定により中学校技術二種免許状の授与を受ける場合の単位数です。
  4. 検討中の制度:中学校「情報・技術科(仮称)」に対応する免許制度、認定講習、教員資格認定試験の在り方を検討しています。

2026年度以降の予定

資料の工程表に示された主な時期です。

  1. 2026施策を開始研修動画、教材開発、オンライン認定講習を開始。生成AIガイドラインを年度内に改定。
  2. 2027小学校研修年度末までに小学校向け研修動画を提供し、教育委員会による研修を促進。
  3. 2028中学校研修・免許状年度末までに中学校向け研修を実施。臨時免許状所有者・免許外教科担任ゼロが目標。
  4. 2030小学校新しい学習指導要領の全面実施を想定。
  5. 2031
    2032
    中学校・高校中学校は2031年度、高校は2032年度入学生からの実施を想定。

計画の実施主体国が教材・研修・制度整備を進め、教育委員会と学校が研修、人員配置、機器整備、複数校指導・遠隔授業などを実施します。

詳しく読む資料の背景、数値、3本柱、2032年度までの見通し

詳しい解説

この資料は何を示す計画か

次期教育課程では、小学校の「情報の領域(仮称)」、中学校の「情報・技術科(仮称)」、高校情報科の内容の高度化などが審議されています。新しい内容を示すだけでは、実際の授業は成り立ちません。教える人、教材、研修、機器、相談先を同時に用意する必要があります。

この資料は、そのための条件整備を扱っています。国が教材や研修の開発を進め、教育委員会・学校・大学・民間人材と連携しながら実施体制を整える、という全体像です。資料内には、すでに着手する施策、今後検討する施策、暫定的な日程が同時に載っています。読むときには、この3種類を分ける必要があります。

資料が示す現状・課題

資料は、情報活用能力と教員体制の双方に課題があることを示しています。2021年度の情報活用能力調査では、中学生の57.1%がレベル5以下でした。政府は、2026年度までにこの割合を20%以下にする目標を掲げています。

プログラミング指導について、都道府県教育委員会の64%が「課題がある」「一部課題がある」と回答したデータも掲載されています。ただし、資料自身が、これは2023年2月に実施した結果非公表の調査に基づくと注記しています。数値の出典を第三者が同じ資料から詳しく検証できない点には注意が必要です。

中学校技術分野では、免許状を所有する教員の確保も課題です。2025年度の担当者9,649人の内訳は、普通免許状所有者7,243人、免許外教科担任1,863人、臨時免許状所有者543人とされています。さらに、技術科担当者は50歳代の割合が36.9%で、国語・数学・理科・社会・英語の平均24.1%より高く、今後の採用・養成も含めた対策が必要です。

柱1 教員研修と指導力の向上

第一の柱は、担当する全ての教員が必要な内容を学べる仕組みです。2026年度から体系的な研修動画を作り、小学校向けは2027年度末まで、中学校向けは2028年度末までを意識して研修を進める計画が示されています。高校についても、授業で使える動画や研修の支援を続けます。

研修内容は、プログラミングや情報技術だけではありません。SNS上の誹謗中傷や犯罪など、現在すでに学校が向き合っている課題も、教育課程の改訂を待たずに扱う方針です。研修資料を集約するサイト、指導的な教員向けの資料、学校段階を越えて教員同士が相談・交流できるネットワークも検討されています。

授業を支える環境として、PC教室や3Dプリンターなどの機器整備にも触れています。情報教育は、説明を聞くだけでなく実際に試す活動を含むため、教員研修と設備を別々に考えない点が重要です。

柱2 効果的・効率的な指導体制

第二の柱は、一人の担当教員だけで全てを抱えない体制づくりです。授業でそのまま活用できる動画を含む学習者用教材、学校外の専門人材、民間企業からの人材派遣、複数校を担当する指導、遠隔授業、学校段階を越えた連携、支援スタッフなどが挙げられています。

ただし、これらの方法は十分に広がっていません。資料に掲載された中学校技術分野の調査では、遠隔授業を「活用したことはない」が82.5%、複数校指導を「活用したことはない」が76.0%でした。「活用したことがある」は、それぞれ4.8%、8.7%です。回答割合には残りがあるため、この二つだけで全回答を説明できるとは限りません。

外部専門人材について回答した35都道府県のうち、85.7%が財政支援、82.9%が人材の発掘・確保への支援を国に求めています。制度を認めるだけでなく、費用と人材探索を支える必要があることが分かります。

高校では、柔軟な教育課程の編成や「情報Ⅱ」の履修促進も挙げられています。生成AIを含む学校でのAI利用については、2026年度にガイドラインを改訂する予定です。AIの扱いを単発の話題にせず、授業・校務・安全面を含む継続的な更新として扱う計画と読めます。

柱3 免許状所有状況の改善

第三の柱は、中学校技術分野と高校情報科で、教科の免許状を持つ教員による指導を増やすことです。資料本文は、2028年度までに臨時免許状・免許外教科担任をゼロにする目標を掲げています。一方、資料中の人数を示す数値目標の推移は中学校技術分野について描かれています。高校情報科まで同じ数値表で示されているわけではないため、区別して読む必要があります。

対策として、教員資格認定試験、免許制度の見直し、免許法認定講習、特別免許状、特別非常勤講師などが挙げられています。中学校技術の一種免許状を取得できる大学は67大学で、教職課程を持つ大学全体約600校と比べて限られています。

現職教員向けには、必要な13単位を最短1年で取得できるオンライン中心の認定講習が案内されています。実技の一部は対面で行い、専門実技は2.5日間です。受講料・教材費・テキスト代は不要とされていますが、実技や移動に伴う一部費用は受講者負担です。2026年度は656人の受講を計画しています。

すでにある制度として、高校情報科の免許状を持つ教員が中学校技術分野の情報に関する部分を担当できる特例、高校情報または工業の免許状所有者が追加9単位で中学校技術の二種免許状を取得できる仕組みも紹介されています。

2026年度から2032年度までの見通し

  • 2026年度:体系的な研修動画、教材開発、認定講習、AI利用ガイドライン改訂などを進める。
  • 2027年度末まで:小学校で必要となる研修内容を整え、関係する教員への研修を促進する。
  • 2028年度末まで:中学校の関係教員に対する研修を進める。臨時免許状・免許外教科担任の改善目標もこの年度に置かれている。
  • 2030年度:小学校での全面実施を想定。
  • 2031年度:中学校での全面実施を想定。
  • 2032年度:高校の入学生からの全面実施を想定。

この日程は、2026年7月30日時点の審議を前提とした見通しです。資料にも変更の可能性が明記されているため、学校の年間計画や教員免許取得の判断では、その時点の最新資料を確認する必要があります。

学校段階・立場別に見る

小学校
一部の担当者だけでなく、関係する教員が情報活用能力を指導できるよう、研修を広げることが中心です。
中学校
新しい教科構成の検討と並行して、技術分野の免許所有者、研修、実習環境、外部人材を確保する必要があります。
高校
情報Ⅰの着実な実施に加え、情報Ⅱや高度な内容を扱える体制、大学や中学校との接続が課題になります。
教育委員会・学校管理職
研修を受ける時間の確保、人材配置、複数校指導・遠隔授業の運用、機器整備を組み合わせて考える必要があります。
大学・教職課程
情報・技術を教えられる人材の養成、現職教員向け講習、免許取得機会の拡大で役割が大きくなります。

読むときの注意

  • この解説は、2026年7月30日時点の資料を2026年7月31日に確認して作成しています。
  • 「情報の領域」「情報・技術科」「技術の統合」は資料中でも仮称です。
  • 全面実施年度を含むロードマップは、今後の審議によって変更される可能性があります。
  • 資料には、実施が決まった施策と「検討する」とされた施策が混在しています。
  • 調査結果の一部には、元の調査結果が非公表のものがあります。

一次資料

最終確認:2026年7月31日