高校では2022年度に共通必履修科目「情報Ⅰ」が始まり、2025年1月の大学入学共通テストから「情報」が出題教科に加わりました。同じ2025年4月には、「情報Ⅰ」を学んだ生徒が大学へ進学しています。

大学の数理・データサイエンス・AI教育も、高校「情報Ⅰ」の学習内容を踏まえる構成へ改訂されています。高校の授業、大学の初年次教育、企業の研修を通して見ると、学習内容の重複と不足を整理できます。

講演者が担当してきた学校段階

講演者は高校教員として勤務し、現在は大学で授業を担当しています。所持している教員免許状は高等学校のみですが、中等教育学校では、学校設定科目として設けられた中学3年生の授業も担当しました。その授業では、技術・家庭科の技術分野の時間を使い、「情報の技術」に関する内容を扱いました。

このため、中学校段階、高校、大学で情報教育に関わった経験があります。学校段階によって授業の目的や時間数は異なりますが、データ、プログラミング、情報社会、問題解決といった内容は繰り返し現れます。

  • 中等教育学校の中学校段階:学校設定科目で、中学3年生に技術分野「情報の技術」に関する授業を担当した。
  • 高校:共通必履修科目「情報Ⅰ」で、情報と情報技術を使った問題解決を扱う。
  • 大学:基礎情報教育や数理・データサイエンス・AI教育で、実データや専門分野へ広げる。

以下では高校「情報Ⅰ」の現行制度と授業内容を確認した後、中学校と大学との接続を順に扱います。

講演の最初に確認する三つの学校段階

最初に、中学校・高校・大学で扱う内容を短く並べます。この後、高校「情報Ⅰ」から順に詳しく確認します。

中学校 情報の技術

双方向コンテンツ、計測・制御、ネットワーク、情報セキュリティを、設計・制作・評価の過程で扱います。

高等学校 情報Ⅰ・情報Ⅱ

情報デザイン、プログラミング、モデル化、ネットワーク、データ分析を、問題の発見・解決に用います。

大学・高専 基礎情報教育・MDASH

実データと実課題を用い、数理・データサイエンス・AIを専門分野や意思決定へ適用します。

大学で扱うMDASH

MDASHは、大学・短期大学・高等専門学校の正規課程で実施する数理・データサイエンス・AI教育を、文部科学大臣が認定する制度です。

リテラシーレベル
データ・AIを読む、説明する、扱うための基礎と、倫理・法・安全を学ぶ段階
応用基礎レベル
データサイエンス、データエンジニアリング、AIを専門分野の課題へ応用する段階

609リテラシーレベルの認定プログラム

613校いずれかのレベルの認定がある大学・短大・高専

約53%対象1,147校に占める認定校の割合

2026年4月時点。出典:[7]

認定一覧には、北海道大学、日本女子大学、名古屋文理大学など、国立・公立・私立の大学、短期大学、高等専門学校が掲載されています。

MDASHの学習内容と認定状況を詳しく見る ↓

高校「情報Ⅰ」の現在

「情報Ⅰ」は、高校の全ての生徒が履修する共通必履修科目です。2025年1月からは大学入学共通テストの出題科目にもなりました。

文部科学省は、情報Ⅰで全ての生徒がプログラミングのほか、ネットワーク、情報セキュリティ、データベースの基礎などを学ぶと説明しています。学習指導要領では、情報と情報技術を問題の発見・解決に活用する力を育成する科目として構成されています。

情報Ⅰで扱う四つの領域

情報Ⅰの内容は、次の四つの領域で構成されます。

  1. 01情報社会の問題解決情報とメディアの特性、法規、安全、問題の発見・解決を扱う
  2. 02コミュニケーションと情報デザイン目的や受け手に応じて情報を整理し、表現を設計する
  3. 03コンピュータとプログラミングコンピュータの仕組み、アルゴリズム、モデル化・シミュレーションを扱う
  4. 04情報通信ネットワークとデータの活用ネットワーク、情報セキュリティ、データの収集・整理・分析を扱う

高校の授業で扱う活動

領域授業で行う活動の例学習者に求めること
情報社会の問題解決身近な問題を見つけ、情報を集め、解決方法を比較します。情報の信頼性、権利、安全性を含めて判断し、解決方法を評価・改善します。
情報デザイン同じ内容を図、文章、映像などで表し、伝わり方を比較します。目的、受け手、媒体に応じて表現を選び、制作物を改善します。
プログラミング処理の手順を考えてプログラムを作り、モデルやシミュレーションを試します。結果だけでなく、処理の考え方やモデルの限界を説明します。
ネットワークとデータデータを集め、整理・可視化し、ネットワークとセキュリティを調べます。データから読み取れることと、読み取れないことを根拠とともに説明します。

出典:[2] 文部科学省「高等学校学習指導要領(平成30年告示)解説 情報編」

情報Ⅰでは、課題の設定、方法の選択、制作・分析、結果の説明、評価・改善までを扱います。

四領域を横断する授業の提案

講演者は2021年の発表で、ピクトグラム制作を共通題材として、問題解決、情報デザイン、プログラミング、データ活用を横断的に扱う授業を提案・報告しました。

  • 情報デザイン:規格、色、形状、受け手を踏まえてピクトグラムを設計する。
  • プログラミング:人型ピクトグラムの形や動きをプログラムで表す。
  • データ活用:制作物の相互評価を集計し、評価結果を分析する。
  • 問題解決:制作、評価、分析を通して、表現と制作過程を改善する。

ピクトグラムの制作、相互評価、分析、改善を一連の授業として構成し、各領域の知識と技能を関連付けます。この構成は、中学校、高校、大学で共通題材を扱う場合にも応用できます。

実教出版「情報教育資料54号」の掲載原稿を見る ↗ 全国大会の発表資料を見る ↗

中学校 技術分野「情報の技術」との接続

中学校の技術・家庭科は、技術分野と家庭分野で構成されます。技術分野では、次の四つの内容を3年間で学びます。

  • A 材料と加工の技術木材・金属などの材料の特性、加工方法、設計・製作
  • B 生物育成の技術作物や動物の成長、育成環境、栽培・飼育
  • C エネルギー変換の技術電気・運動・熱、回路や機構、製作・点検
  • D 情報の技術ネットワーク、情報セキュリティ、双方向コンテンツ、計測・制御

技術・家庭科の標準授業時数は、第1学年70時間、第2学年70時間、第3学年35時間で、1時間は50分です。この合計175時間を技術分野と家庭分野に配当します。「D 情報の技術」を中学3年に集中させる編成もあります。各内容の履修学年と時間数は、学校が3年間の指導計画で定めます。[19]

現行の中学校技術・家庭科(技術分野)「D 情報の技術」では、生活や社会を支える情報の技術、ネットワークを利用した双方向性のあるコンテンツ、計測・制御、社会の発展と情報の技術を扱います。文部科学省の研修用教材ページは、小学校のプログラミング教育を発展させ、これらの学習が高校の情報科へつながると説明しています。[1]

中学校では、情報技術の仕組みを理解し、双方向コンテンツや計測・制御のプログラムを制作して、問題解決の過程を評価・改善します。高校では、その経験を情報の科学的理解、モデル化、データ分析などへ広げます。

中学校から高校へ中学校での制作・計測・制御・双方向コンテンツの経験を確認し、高校では情報の科学的理解、モデル化、データ分析へ発展させます。

サイト内の授業動画を見る → 文部科学省「D 情報の技術」を見る ↗

大学の数理・データサイエンス・AI教育との接続

大学の数理・データサイエンス・AI教育では、高校「情報Ⅰ」を学んだ学生が入学することを明示的に意識しています。

2024年改訂の「数理・データサイエンス・AI(リテラシーレベル)モデルカリキュラム」は、高等学校「情報Ⅰ」で学んでいることを前提とし、社会の実例を題材にした実データや実課題の演習を中心にすることを推奨しています。必要に応じて情報Ⅰの内容を復習し、重複を整理して生まれた時間をAI、特に生成AIの学習へ充てる考えも示しています。[6]

原資料にある「情報ⅠとMDASHの対応表」

ここで参照しているのは、中学校と高校の対応表ではなく、高校「情報Ⅰ」と大学・高等専門学校のMDASHとの対応表です。

表では、情報社会、情報デザイン、デジタル、ネットワーク、問題解決、プログラミングの内容と、リテラシーレベル応用基礎レベルの学習項目が対応付けられています。

MDASHの申請では、申請する教育プログラムの授業科目がモデルカリキュラムに対応する内容を含むか確認します。文部科学省の認定制度ページにも、モデルカリキュラムに対応した教育内容を含むことが認定要件として示されています。[3]

中学校欄の位置付け二つのMDASHモデルカリキュラムに「中学校」の項目はありません。このページの「中学校・高校・大学の対応表」は、中学校の学習指導要領「D 情報の技術」、高校の共通必履修科目「情報Ⅰ」、大学のMDASHモデルカリキュラムを組み合わせ、講演用に整理したものです。原資料の表と、このページで拡張した表を分けて掲載しています。

大学での扱い高校内容の理解を確認し、必要な内容を復習した上で、実データ・実課題・専門分野へ進むことが想定されています。

中学校・高校・大学の対応表

中学校技術・家庭科(技術分野)「D 情報の技術」、高校「情報Ⅰ」、大学MDASHには、問題解決、情報表現、コンピュータ、ネットワーク、データ、プログラミングなどの共通する内容があります。学校段階が上がると、制作する仕組み、説明に用いる根拠、扱うデータ、専門分野への適用範囲が広がります。

内容中学校
技術分野「D 情報の技術」
高校
「情報Ⅰ」
大学
MDASH
社会と問題解決生活や社会を支える情報の技術を理解し、問題を見いだして課題を設定し、解決策を具体化して評価・改善します。情報と情報技術を活用して問題を発見し、情報を収集・整理・分析して、解決方法を評価・改善します。社会でのデータ・AI活用事例と実課題を扱い、データから得た結果を各自の専門分野や意思決定へ適用します。
情報表現とコミュニケーションネットワークを利用した双方向性のあるコンテンツを設計・制作します。メディアの特性、受け手、目的を踏まえ、情報を整理・構造化・可視化して表現します。データを読み、適切な図表を選び、分析結果と根拠を他者へ説明します。
デジタルとコンピュータ情報のデジタル化、コンピュータの構成、情報を処理する仕組みを扱います。二進数、文字・音・画像のデジタル表現、論理回路、ハードウェア、ソフトウェア、OSなどを扱います。データ表現、データ構造、アルゴリズム、プログラミングなどを大学の教育目的に応じて扱います。
ネットワークとセキュリティネットワークの仕組み、情報セキュリティ、安全で適切な利用を扱います。プロトコル、IPアドレス、情報システム、データベース、暗号化、認証などを扱います。データ収集、データベース、データエンジニアリング、ITセキュリティ、データ保護を扱います。
データの収集と分析センサーなどから必要な情報を取得し、計測条件と結果を確認して、制作した仕組みを改善します。データの尺度、代表値、分布、相関、回帰、モデル化などを使い、収集したデータを分析します。実データの観察・加工・可視化・分析を行い、分析方法と結果の限界を踏まえて説明します。
プログラミングとモデル化双方向コンテンツと計測・制御のプログラムを設計・制作し、動作を評価・改善します。アルゴリズム、配列、関数、探索・整列、モデル化・シミュレーションを扱います。アルゴリズム、データ構造、プログラミングを扱い、応用基礎では専門分野の課題解決へ適用します。
AIと情報技術の発展情報の技術の発達が生活や社会、産業に与える影響を考え、よりよい技術の在り方を検討します。AIを含む情報技術の仕組み、活用、問題点を、情報社会・データ活用・問題解決と関連付けて扱います。AIの特徴、機械学習、生成AI、倫理・法・社会上の留意事項を扱い、専門分野での利用へ広げます。

表の位置付け中学校欄は文部科学省の「D 情報の技術」、高校・大学欄は高校「情報Ⅰ」とMDASHモデルカリキュラムの対応表を基に、この講演用に項目を統合したものです。

学校段階別に見る現行制度と審議中の方向

中学校・技術分野
  • 現行制度技術・家庭科の技術分野は、材料と加工、生物育成、エネルギー変換、情報の技術の四内容で構成されています。
  • 学習内容「D 情報の技術」で、情報技術の仕組み、ネットワークと安全な利用、双方向コンテンツ、計測・制御、設計・制作・評価を扱います。
  • 審議中技術分野を再編した「情報・技術科」を設け、情報技術と生産技術をより専門的・体系的に扱う案が示されています。
高等学校・情報科
  • 現行制度共通必履修科目「情報Ⅰ」と選択科目「情報Ⅱ」を実施しています。「情報Ⅰ」は大学入学共通テストの出題科目です。
  • 学習内容「情報Ⅰ」で、情報社会の問題解決、情報デザイン、プログラミング、ネットワークとデータ活用の四領域を扱います。「情報Ⅱ」ではその内容を発展させます。
  • 審議中「情報Ⅰ」「情報Ⅱ」の構成を維持し、AI、データサイエンス、情報デザイン、システム開発、価値創造を充実する案が示されています。
大学・高等専門学校
  • 現行制度初等中等教育の学習指導要領に相当する共通課程はありません。多くの大学・高等専門学校が、基礎情報教育やMDASH認定プログラムを実施しています。
  • 学習内容データ・AIの活用事例、データを読む・説明する・扱う基礎、倫理・法・安全を学び、実データと各専門分野の課題へ広げます。
  • 接続の変化「情報Ⅰ」の既習者が2025年度から入学しています。今後は小・中・高の次期課程を経験した入学者へ順次切り替わります。
情報ⅠとMDASHの詳細対応表2024年改訂版モデルカリキュラム39ページをHTMLで再構成

原資料は、高校「情報Ⅰ」の教科書掲載内容を大分類・中分類・小分類に分け、リテラシーレベル応用基礎レベルの対応箇所を示しています。これはMDASHの申請様式そのものではなく、認定制度が参照するモデルカリキュラムの比較表です。[6]

大分類高校「情報Ⅰ」の内容教科書内容の例リテラシーレベル応用基礎レベル
情報社会情報と情報社会情報の特性・定義と分類、メディア、情報社会などリ1-1 社会で起きている変化
問題解決の考え方問題の発見、問題解決の遂行、表現と伝達などリ1-5 データ・AI利活用の現場応1-1 データ駆動型社会とデータサイエンス
法規による安全対策セキュリティ、安全対策などリ3-2 データを守る上での留意事項応2-6 ITセキュリティ
個人情報とその扱いリ3-1 データ・AIを扱う上での留意事項
知的財産権の概要と産業財産権リ3-1 データ・AIを扱う上での留意事項
著作権リ3-1 データ・AIを扱う上での留意事項
情報デザインコミュニケーションとメディアコミュニケーションの手段や形態、メディアなど応2-1 ビッグデータとデータエンジニアリング
情報デザインと表現の工夫文字、配色、抽象化、可視化、構造化などリ2-2 データを説明する
発展・プレゼンテーションリ2-2 データを説明する
Webページと情報デザインHTML、CSSなど応2-1 ビッグデータとデータエンジニアリング
デジタルデジタル情報の特徴デジタル表現や情報量など応2-2 データ表現
数値と文字の表現2進数、浮動小数点、文字コードなど応2-2 データ表現
演算の仕組み加減算、論理回路など応2-7 プログラミング基礎
音の表現応2-2 データ表現
画像の表現応2-2 データ表現
コンピュータの構成と動作ハードウェア、ソフトウェア、OS、メモリ、CPUなど応2-1 ビッグデータとデータエンジニアリング
コンピュータの性能応2-1 ビッグデータとデータエンジニアリング
発展・データの圧縮と効率化応2-2 データ表現
ネットワークネットワークとプロトコルLAN、WAN、サーバ、プロトコルなど応2-1 ビッグデータとデータエンジニアリング
インターネットの仕組みIPアドレス、ドメイン、ルーティングなど応2-1 ビッグデータとデータエンジニアリング
Webページの閲覧とメールの送受信応2-3 データ収集
情報システムリ1-3 データ・AIの活用領域応2-1 ビッグデータとデータエンジニアリング
情報システムを支えるデータベース応2-1 ビッグデータとデータエンジニアリング
データベースの仕組み応2-4 データベース
個人による安全対策ウイルス、不正アクセスなど応2-6 ITセキュリティ
安全のための情報技術電子透かし、ブロックチェーン、VPN、誤り検出、暗号化、電子署名など応2-6 ITセキュリティ
問題解決データの収集と整理リ1-2 社会で活用されているデータ応2-3 データ収集、応2-5 データ加工
ソフトウェアを利用したデータの処理リ2-3 データを扱う
統計量とデータの尺度リ2-1 データを読む応1-3 データ観察
発展・データの分布と検定の考え方応1-6 数学基礎
時系列分析と回帰分析応1-4 データ分析
発展・区間推定とクロス集計応1-6 数学基礎
モデル化とシミュレーション応3-7 予測・判断
プログラミングアルゴリズムとプログラミングリ4-2 アルゴリズム基礎、リ4-3 データ構造とプログラミング基礎応1-7 アルゴリズム、応2-7 プログラミング基礎
プログラミングの基本リ4-3 データ構造とプログラミング基礎応1-7 アルゴリズム、応2-7 プログラミング基礎
配列リ4-3 データ構造とプログラミング基礎応1-7 アルゴリズム、応2-7 プログラミング基礎
関数リ4-3 データ構造とプログラミング基礎応1-7 アルゴリズム、応2-7 プログラミング基礎
探索リ4-2 アルゴリズム基礎応1-7 アルゴリズム、応2-7 プログラミング基礎
整列リ4-2 アルゴリズム基礎応1-7 アルゴリズム、応2-7 プログラミング基礎
発展・オブジェクト指向プログラミング応2-7 プログラミング基礎
発展・プログラムの設計手法応2-7 プログラミング基礎

「—」は、原表の該当欄に対応項目が記載されていない箇所です。表記の「リ」はリテラシーレベル、「応」は応用基礎レベルを示します。原資料の明らかな誤記は改めました。

モデルカリキュラム2024年改訂版・39ページを見る →

代表的な用語で見る中学校・高校・大学の接続

情報処理学会の「情報科全教科書用語リスト」は、高校情報科の検定済教科書の索引語を整理し、出現状況、領域、要約説明を付けています。ここでは、その中から学校段階の接続を説明しやすい代表語を取り上げます。[13]

代表語中学校での扱い高校「情報Ⅰ」大学MDASH等
問題解決生活や社会の問題から課題を設定し、情報の技術を使った解決策を制作・評価します。情報を収集・整理・分析し、解決方法を比較して評価・改善します。実データと専門分野の課題に適用し、分析結果を意思決定へつなげます。
アルゴリズム双方向コンテンツや計測・制御で、処理の手順を考えます。探索、整列、配列、関数などを使い、処理の効率や正しさを検討します。データ構造や計算量を含め、分析・AI・専門課題の処理へ発展させます。
プログラミングコンテンツや計測・制御の仕組みを制作し、動作を改善します。問題解決、モデル化、シミュレーションのためにプログラムを作成します。データ加工、分析、機械学習や各専門分野の実装に利用します。
ネットワーク情報通信ネットワークの仕組みと安全な利用を扱います。プロトコル、IPアドレス、情報システムの構成を科学的に理解します。データ収集基盤、クラウド、分散処理など、大学の教育目的に応じて広げます。
情報セキュリティ安全で適切な利用と、情報を守る必要性を扱います。暗号化、認証、脅威、対策、法・権利との関係を扱います。データ保護、プライバシー、研究倫理、専門分野のリスク管理へ接続します。
データベース情報を蓄積・管理し、ネットワークを通して利用する仕組みに触れます。データモデル、検索、情報システムとデータベースの役割を扱います。データエンジニアリング、前処理、専門データの管理・分析へ発展させます。
データ分析計測値や調査結果を整理し、制作した仕組みの改善に使います。代表値、分布、相関、回帰、可視化などを使って根拠を説明します。実データに統計・機械学習を適用し、分析方法と限界を検討します。
AI情報技術の発展と生活・社会への影響として扱います。AIの仕組み、活用事例、データとの関係、倫理的・社会的課題を扱います。機械学習や生成AIを、専門分野の課題、研究、業務へ適用します。

表の根拠高校欄の代表語は情報処理学会の教科書用語リストを参照しています。中学校欄は学習指導要領の「D 情報の技術」、大学欄はMDASHモデルカリキュラムとの対応を、この講演用に整理したものです。

授業内容を取り巻く制度・事業の変化

ここまでに整理した高校・中学校・大学の授業内容に関係する制度上の変化を、実施時期の順に並べます。

2022年度高校で共通必履修科目「情報Ⅰ」を実施。全ての生徒がプログラミング、ネットワーク、情報セキュリティ、データ活用などを学ぶ。

2024年改訂MDASHのモデルカリキュラムが、高校「情報Ⅰ」の学習内容との対応を明示。

2025年大学入学共通テストで「情報」を出題。「情報Ⅰ」を学んだ生徒が大学へ進学。

2026年度DXハイスクール1,249校を採択。情報・数学、探究、大学・企業等との連携を支援。

現在求められている学習

  • 情報と情報技術を使って問題を発見し、解決方法を考え、評価・改善する。
  • プログラミング、ネットワーク、情報セキュリティ、データの収集・整理・分析を扱う。
  • 実データと実課題を使い、情報・数学・探究・専門分野を関連付ける。
  • AIを含む情報技術について、仕組み、活用、倫理・法・社会上の留意事項を扱う。

制度変更の理由

文部科学省は、社会の情報化と技術革新を踏まえて情報教育の充実を進めてきました。大学入試センターは、「情報Ⅰ」が共通必履修科目になったことなどを、共通テストに「情報」を追加した理由として説明しています。

大学側では、「情報Ⅰ」を学んだ学生が2025年4月に入学することと、生成AIなどの社会動向を踏まえてMDASHのモデルカリキュラムが改訂されました。DXハイスクールでは、情報・数学、探究、大学・企業等との連携を組み合わせた実践的な学びを支援しています。

2026年8月4日までの審議状況

2026年8月4日、中央教育審議会の教育課程企画特別部会(第16回)が開かれました。各教科等ワーキンググループの取りまとめ案を並べ、次期学習指導要領の「審議まとめ」に向けて、教育課程全体の関係を検討する段階です。[24][26]

現行学習指導要領
実施中2026年度の授業は現行の学習指導要領に基づきます。
各教科等WG取りまとめ案
審議資料教科ごとの目標・内容・実施条件を整理した案です。8月4日の資料には会議後修正版も含まれます。
教育課程企画特別部会
全体審議教科間の関係と教育課程全体の構成を「審議まとめ」に向けて検討しています。
次期学習指導要領
今後答申・告示などの手続きを経て、内容と実施時期が確定します。
8月4日の配付資料一覧を見る ↗ 「審議まとめに向けた検討」を見る ↗

現行課程と審議中の案を分けて見るWG

2026年度の授業は、現在の学習指導要領に基づいて行われています。情報・技術ワーキンググループの取りまとめ案は、次期学習指導要領に向けた教科構成、学習内容、先行実施などの検討案であり、現在の授業と分けて確認します。[28]

学校段階2026年度の授業情報・技術WG取りまとめ(案)
小学校各教科と総合的な学習の時間などで、情報活用能力やプログラミングを扱います。独立した情報科はありません。第3~6学年の総合的な学習の時間に「情報の領域」を設け、「情報ブロック」と「ミニ探究ユニット」を組み合わせる案です。
中学校技術・家庭科の技術分野「D 情報の技術」で、双方向コンテンツ、計測・制御、ネットワークなどを扱います。情報技術と生産技術を扱う「情報・技術科」を創設し、内容を専門的・体系的に充実する案です。
高等学校共通必履修科目「情報Ⅰ」と選択科目「情報Ⅱ」で構成されています。情報Ⅰ・情報Ⅱを維持しつつ、AI、データサイエンス、情報デザイン、システム開発、価値創造の学習を充実する案です。
大学・高専学習指導要領とは別の制度として、MDASHのリテラシーレベル応用基礎レベルが実施されています。情報・技術ワーキンググループは小学校・中学校・高校を対象とし、高校情報科では高等教育のMDASHとの接続も検討しています。

出典:現行課程は [1][2]、審議中の案は [8]

2026年8月6日現在小学校「情報の領域」、中学校「情報・技術科」、次期の高校情報科の内容と実施時期は審議中です。

2026年度の学年別 学習課程

2026年度に在籍する小学1年生から大学4年生までを、各学校段階で適用された学習指導要領に沿って並べます。4月入学・標準年限で進級した場合の整理です。

大学4・3年生高校では「社会と情報」または「情報の科学」を履修した世代

大学2年生「情報Ⅰ」を学び、共通テスト「情報」が導入された最初の世代

高校3年生中学校3年間を現行の「D 情報の技術」で学んだ最初の高校生

中学1年生小学校6年間を現行の学習指導要領で学んだ最初の世代

2026年度の在籍小学校中学校 技術分野高校 共通教科情報入試・大学
大学4年生全面実施前旧課程「D 情報に関する技術」旧課程「社会と情報」または「情報の科学」共通テスト「情報」導入前。大学の基礎情報教育・MDASHは所属校の科目による
大学3年生全面実施前旧課程「D 情報に関する技術」旧課程「社会と情報」または「情報の科学」共通テスト「情報」導入前。大学の基礎情報教育・MDASHは所属校の科目による
大学2年生全面実施前移行世代中1・2は旧課程、中3は現行課程現行課程「情報Ⅰ」共通必履修の最初の世代2025年の共通テストから「情報」を出題。大学の科目は所属校による
大学1年生全面実施前移行世代中1は旧課程、中2・3は現行課程現行課程「情報Ⅰ」を共通必履修共通テスト「情報」の対象世代。大学の科目は所属校による
高校3年生移行世代小6のみ現行課程現行課程中学校3年間を現行課程で履修現行課程共通必履修科目「情報Ⅰ」を在学中に履修共通テスト利用時は「情報Ⅰ」が出題範囲
高校2年生移行世代小5・6が現行課程現行課程中学校3年間を現行課程で履修現行課程共通必履修科目「情報Ⅰ」を在学中に履修共通テスト利用時は「情報Ⅰ」が出題範囲
高校1年生移行世代小4~6が現行課程現行課程中学校3年間を現行課程で履修現行課程共通必履修科目「情報Ⅰ」を在学中に履修共通テスト利用時は「情報Ⅰ」が出題範囲
中学3年生移行世代小1・2は旧課程、小3~6は現行課程履修中現行「D 情報の技術」これからこれから
中学2年生移行世代小1は旧課程、小2~6は現行課程履修中現行「D 情報の技術」これからこれから
中学1年生現行課程小1~6履修中現行「D 情報の技術」これからこれから
小学6年生現行課程小1~6これからこれからこれから
小学5年生現行課程小1~5これからこれからこれから
小学4年生現行課程小1~4これからこれからこれから
小学3年生現行課程小1~3これからこれからこれから
小学2年生現行課程小1・2これからこれからこれから
小学1年生現行課程小1これからこれからこれから
全面実施前
その学校段階を、現在の学習指導要領が全面実施される前に終えた世代です。
旧課程
一つ前の学習指導要領に基づいて学んだことを示します。
移行世代
同じ学校段階の途中で全面実施年度を迎え、旧課程と現行課程の両方を経験した世代です。
現行課程
現在実施されている学習指導要領に基づいて学んだ、または学んでいることを示します。
履修中
現行課程の下で、2026年度にその学校段階へ在籍して学んでいることを示します。
これから
その学校段階にはまだ進んでいないという意味です。学習内容が未定義という意味ではありません。

小学校の現行課程では、各教科等の中で情報活用能力とプログラミングを扱います。学校独自の先行実施、留年・浪人などによる在籍年次の違い、大学ごとの履修科目は、この表とは別に確認します。

出典:実施年度 [16]、中学校 [22][1]、高校 [23][2]、共通テスト [21]

各教科の検討から教育課程全体の審議へWG

情報・技術ワーキンググループの取りまとめ案は、現行課程の課題から先行実施までを一体で整理しています。ここでは、その内容を基本認識、資質・能力、学校段階の接続、学習・評価、指導体制、環境整備の六つに分けて確認します。[18][24]

基本認識と課題WG

AIなどの情報技術が生活・産業・意思決定の基盤になる一方、偽・誤情報、情報の偏り、認知への影響、人材需給の不均衡が拡大しています。すべての子供が一定水準以上の情報活用能力を身に付けるため、小・中・高の学習内容と実施条件を一体で整える方針です。

育成する資質・能力WG

情報技術を使って課題を解決し価値を生み出す「活用」を中核に、情報の真偽やリスクを判断する「適切な取扱い」と、情報技術の科学的な仕組みを捉える「特性の理解」を組み合わせます。メディアリテラシー、AI、プログラミング的思考を重点内容としています。

学校段階の接続WG

小学校では総合的な学習の時間に「情報の領域」を加え、中学校では「情報・技術科」を新設し、高校では「情報Ⅰ」「情報Ⅱ」を充実する案です。活用・適切な取扱い・特性の理解を段階的に深め、高校からMDASHを含む高等教育と社会へつなぎます。

学習・指導・評価WG

課題の発見、情報の収集・分析、設計・制作、評価・改善を一つの学習過程として構成します。情報Ⅰ・情報ⅡではPBLを取り入れ、成果物だけでなく、問題解決や価値創造の過程をルーブリックや形成的評価で捉える方向です。

教材・研修・指導体制WG

学習者用教材、授業動画、教員研修コンテンツを整備し、全国規模の研修と免許法認定講習を進める計画です。担当教員の確保には、外部人材の活用、複数校指導、遠隔授業も組み合わせます。

環境整備と実施工程

1人1台端末に加え、PC教室、ネットワーク、3Dプリンターなど、制作・計測・データ処理に必要な環境を整備します。情報・技術ワーキンググループは、小学校を2028年度、中学校を2029年度から段階的に先行実施する方向を示しています。学習指導要領全体の工程イメージでは、高校も2029年度から移行期間に入る予定です。[28][17]

このサイトで教材・研修を提供する際の読み取りこの資料群からは、教材の内容だけでなく、対応する資質・能力、前後の学校段階、授業の組み立て、評価方法、必要な研修と環境を併せて示す必要があると読み取れます。これは文部科学省資料の文言ではなく、資料全体を踏まえたこの記事での整理です。

WGこの印は、情報・技術ワーキンググループ取りまとめ案を根拠とする記述に付けています。

先行実施までの時間感覚

文部科学省が2026年7月8日に示した学習指導要領全体の工程イメージでは、先行実施の期間は、小学校が2028年度、中学校と高校が2029年度から始まります。2026年度から数えると、小学校は2年度後、中学校・高校は3年度後です。[17]

研修動画・教材を順次整備現行課程に対応する研修動画、指導力向上支援コンテンツ、学習者用教材の作成・実践検証が進められています。

小学校

  1. 研修コンテンツを整備新課程に対応する研修動画を用い、全担当教員への研修を進める計画
  2. 移行期間先行実施の具体的な内容は検討中
  3. 全面実施現時点の予定

中学校

  1. 研修コンテンツを整備新課程に対応する研修動画を用い、全担当教員への研修を進める計画
  2. 移行期間情報・技術科を段階的に先行実施する方向で審議中
  3. 全面実施現時点の予定

高等学校

  1. 研修支援・教材整備授業実践動画と研修コンテンツを順次作成
  2. 移行期間先行実施の具体的な内容は検討中
  3. 年次進行で実施2032年度入学生から順次実施する予定
  4. 全学年で実施現時点の予定

工程表の読み方三つの列は、同じ時期の小学校・中学校・高校を横に比較します。小学校は2028年度、中学校・高校は2029年度から移行期間に入り、小学校は2030年度、中学校は2031年度、高校は2032年度入学生から年次進行で実施する予定です。先行実施の具体的な内容は引き続き審議されます。研修動画と研修コンテンツの時期は、2026年7月30日版の指導体制改善プランに示されたロードマップに基づきます。[9]

学習指導要領全体の工程表を見る →研修動画・教材整備のロードマップを見る →

次期課程に向けた準備工程WG

時期資料に示された準備・実施位置付け
2026年度現行課程に対応する研修動画、学習者用教材、指導主事向け研修コンテンツなどの作成を進めます。
教員研修と教材整備の内容を見る →
実施中・作成中
2027年度末まで小学校「情報の領域」の趣旨、教材を使った授業づくり、指導上の留意点を扱う研修動画を作成・提供する計画です。
指導体制改善プランの工程を見る →
計画
2028年度小学校「情報の領域」を段階的に先行実施する方向が示されています。
先行実施と全面実施の予定を見る →
審議中の案
2028年度末まで中学校「情報・技術科」の趣旨、教材を使った授業づくり、指導上の留意点を扱う研修動画を作成・提供する計画です。
指導体制改善プランの工程を見る →
計画
2029年度中学校「情報・技術科」を段階的に先行実施する方向が示されています。
先行実施と全面実施の予定を見る →
審議中の案
2030~2032年度小学校は2030年度、中学校は2031年度、高校は2032年度入学生からの実施が想定されています。
2032年度までの工程を見る →
現時点の想定

出典:[8][9]

「情報活用能力の抜本的向上を支える指導体制改善プラン」に示された動画・研修WG

資料は、現行課程の授業改善から次期課程への移行までを支えるため、次の動画・研修コンテンツを段階的に整備する方針を示しています。

  1. 授業実践動画:中学校技術科と高校情報科について、教科内容の体系性・系統性を意識した授業実践を扱います。
  2. 指導ポイントの研修動画:小学校、中学校、高校の指導上の要点と、既存の研修動画を使った研修方法を扱います。
  3. 新内容への対応:中学校「技術の統合」など、次期課程で新たに扱う内容の指導計画と授業例を扱います。
  4. 新しい情報技術への対応:SNS上の問題や新たな技術など、変化の速い話題を扱う研修教材を更新します。
  5. 地域研修の支援:指導主事や地域の中核となる教員が、教育委員会などの研修で利用できるオンデマンド教材を整備します。

MDASHの学習内容

MDASHにはリテラシーレベルと応用基礎レベルがあり、データとAIの理解、データリテラシー、倫理・法・安全、専門分野や社会課題への活用を扱います。

区分目的主な学習
リテラシーレベルデジタル社会の基礎的な素養として、数理・データサイエンス・AIを適切に理解し、活用する力を身に付けます。社会での活用事例、データを読む・説明する・扱う基礎、AIの特徴、倫理・法・プライバシー、データを守る方法などを扱います。
応用基礎レベル自分の専門分野で数理・データサイエンス・AIを応用し、課題を解決する実践的な力を身に付けます。データサイエンス、機械学習を含むAI、アルゴリズム、プログラミングなどを、実データや専門分野の課題に適用します。

高校「情報Ⅰ」は、情報社会、情報デザイン、コンピュータ、プログラミング、ネットワーク、データ活用を広く扱います。大学MDASHは、情報Ⅰの学習を確認・発展させ、数理・データサイエンス・AIを実データと専門分野へ適用します。

MDASHリテラシーレベルの認定プログラム数

リテラシーレベルの認定は2021年度に始まりました。文部科学省が公表した累計認定プログラム数を、確認時点ごとに示します。

  1. 78プログラムリテラシーレベルの認定開始
  2. 217プログラム公表時点の認定プログラム数
  3. 494プログラム公表時点の認定プログラム数
  4. 592プログラム公表時点の認定プログラム数
  5. 609プログラム現在公表されているリテラシーレベルの認定プログラム数

出典:2025年8月時点は [30]、認定・受講可能人数は [4]、2026年4月時点の制度説明は [7]

この表の単位は学校数や学部数ではなく、大学などが実施する教育プログラムの数です。一つの学校で複数の認定プログラムを実施する場合があるため、プログラム数と学校数は一致しません。

2026年4月時点で受講できる規模

認定区分認定プログラム数1年間に受講可能な学生数
リテラシーレベル609プログラム約59万人
応用基礎レベル388プログラム約26万人

出典:[7]

「1年間に受講可能な学生数」は、認定プログラムを1年間に提供できる定員規模です。リテラシーレベルは約59万人、応用基礎レベルは約26万人です。

学校数で見ると、2026年4月時点でリテラシーレベルまたは応用基礎レベルのいずれかの認定を受けている大学・短期大学・高等専門学校は613校です。文部科学省は、対象となる1,147校の約53%に当たると説明しています。認定を受けていない学校は差し引き534校、約47%です。[7]

大学・短期大学・高等専門学校におけるMDASH認定の状況
「認定なし」534校は、対象1,147校から認定校613校を差し引いた値です。

数値を読むときの区別認定された教育プログラムの数、認定を受けた学校の数、1年間に受講可能な学生の数は、それぞれ別の数値です。また、再認定が行われるため、過去の年度ごとの新規認定数を単純に合計しても、現在有効な認定プログラム数にはなりません。

情報Ⅰを学んだ最初の大学生

高校「情報Ⅰ」は2022年度に始まりました。高校へ2022年4月に入学し、新課程の3年間で「情報Ⅰ」を履修した世代は、2025年1月に最初の共通テスト「情報Ⅰ」を受験し、2025年4月に大学へ入学しました。2026年8月現在は、標準的な進級では大学2年生です。4年制大学を留年・休学せず卒業する場合、卒業は2029年3月です。

  1. 高校入学新課程の「情報Ⅰ」を学ぶ最初の学年
  2. 共通テスト「情報Ⅰ」を初めて出題
  3. 大学入学情報Ⅰの既習者が大学教育へ進む
  4. 大学2年生標準的な進級の場合
  5. 卒業4年制大学をストレートで修了する場合

情報Ⅰ既習世代とMDASHMDASHの認定は2021年度に始まり、プログラムの開始年度、履修年次、修了要件は学校ごとに定められています。上の時系列は、「情報Ⅰを高校で学んだ後に大学へ進んだ最初の世代」を示しています。

文系・理系を含む全学の基礎教育

リテラシーレベルの教育プログラムは、原則として大学などの全学生が履修できる形で開講されます。認定は大学等の教育プログラム単位で行われます。

応用基礎レベルには、大学などの全体を単位とする認定と、学部・学科を単位とする認定があります。大学全体を単位として申請する場合は、理工系だけでなく、人文・社会科学系を含む複数の学部から履修者がいることが認定要件に含まれます。[5]

認定の単位対象となる学生
リテラシーレベル原則として、学部・学科にかかわらず学生が広く履修できる教育プログラムです。
応用基礎・大学等単位人文・社会科学系を含む複数の学部から履修者がいることが、認定要件に含まれます。
応用基礎・学部学科単位認定を受けた学部または学科の学生が対象です。
学問分野の例認定一覧で確認できる学部等の例
人文・社会・生活福島大学人文社会学群、日本女子大学文学部・人間社会学部・家政学部などが掲載されています。
経済・経営・商学横浜市立大学国際商学部、富山大学経済学部、佐賀大学経済学部、龍谷大学経営学部などが掲載されています。
医療・心理北海道医療大学医療技術学部・心理科学部、高知大学医学部などが掲載されています。
農学・海洋茨城大学農学部、高知大学農林海洋科学部、佐賀大学農学部などが掲載されています。
情報・データ・理工横浜市立大学データサイエンス学部、静岡大学情報学部、明治大学総合数理学部・理工学部などが掲載されています。

MDASHの導入により、情報・データ・AIの基礎は、情報系学部を含む全学の基礎教育として位置付けられています。認定制度は数理・データサイエンス・AI教育を対象とし、情報学の専門教育は各大学・学部のカリキュラムで構成されます。

MDASH対応科目・シラバスの例

大学公式ページで科目構成またはシラバスを確認できる例を、講演で比較しやすい分野に分けて示します。ここで示す分野名は、各大学の学部・学科名と教育内容に基づく本記事上の整理です。文部科学省の集計区分とは異なります。

分野大学・対象科目の例公式情報
全学共通名古屋文理大学(健康栄養・フードビジネス・情報メディア)数的処理Ⅰ、数的処理Ⅱ、情報リテラシーを全学科の必修科目として扱います。プログラムとシラバス →
全学共通日本女子大学(全学部)1年次必修の情報科目を入口とし、2年次以降にデータサイエンス、AI、プログラミングへ進みます。全学共通カリキュラム →
人文・社会・生活岩手大学人文社会科学部情報基礎、統計的機械学習実践に、基礎統計学、環境経済論、プログラミングなどを組み合わせます。人文社会科学部の構成 →
人文・社会・生活日本女子大学 家政学部・文学部・人間社会学部基礎情報処理、データサイエンス入門、AI入門、プログラミング入門を組み合わせます。応用基礎プログラム →
経済・経営佐賀大学経済学部基本統計学、経済数学、計量経済学、マーケティングリサーチなどで経済データを扱います。代表的なシラバス →
経済・経営名古屋経済大学 経営学部統計学、数学、プログラミング、AI・データサイエンスに、経営情報やデータ解析を組み合わせます。経営学部のプログラム →
理学・理工横浜市立大学理学部生命情報科学、プログラミング、数学・自然科学実験などへデータサイエンスを接続します。人材育成プログラム →
理学・理工明治大学理工学部基礎・実践・応用発展の科目群を通して、専門課題の解決や企画立案へデータ・AIを使います。SST-MDASH →
情報・データ科学名古屋文理大学 情報メディア学部ICT基礎、データサイエンス、人工知能、知識情報学の計8単位で構成します。応用基礎プログラム →
情報・データ科学秋田大学情報データ科学部統計、AI、アルゴリズム、情報セキュリティ、機械学習、DXプロジェクト実践を扱います。実践教育プログラム →
農学・環境茨城大学農学部統計、プログラミング、データ分析と、地域や農学の課題を扱うPBL科目を組み合わせます。農学部の構成 PDF →
農学・環境岩手大学農学部基礎数学、データ分析演習、統計的機械学習実践を、農学の専門課題へ接続します。農学部の構成 →
医療・心理北海道医療大学 医療技術学部・心理科学部・歯学部情報処理、統計、データサイエンス、AIを各専門分野の学習へ組み込みます。授業実践 →
医療・歯学神奈川歯科大学 歯学部1年次必修科目で基礎を扱い、VR・ARやAIの歯科分野への応用事例へ接続します。歯学部の教育課程 →

非情報系学部では、経済データ、文化資料、心理統計、生命・医療情報、農業・環境データなど、専門分野で扱う資料や判断へ数理・データサイエンス・AIを組み込みます。MDASHには、全学共通科目として基礎を扱う構成と、学部の専門科目へ組み込む構成があります。

履修年次から見る大学での広がり方

大学・対象1年次2年次3年次以降
日本女子大学・全学共通必修の基礎情報処理データサイエンス入門、AI入門、プログラミング入門など専門分野に応じた発展科目
名古屋文理大学・情報メディア学部ICT基礎データサイエンス人工知能、知識情報学など
神奈川歯科大学・歯学部全員が基礎科目を履修し、歯科医学に関係するAI・VR等の事例を扱う専門教育の進行に合わせ、医療情報やデータ活用の理解を応用する

表の読み方履修年次は各大学の公式ページで確認できる範囲を簡略化しています。科目の開講期や修了要件は入学年度によって変わるため、実際の履修には各年度のシラバスを確認します。

DXハイスクールと探究

DXハイスクール(高等学校DX加速化推進事業)は、情報・数学などを重視する教育課程、専門的な外部人材や大学との連携、ICTを活用した探究的・文理横断的・実践的な学びを支援する事業です。2026年度は1,249校が採択されました。[32]

  • 学校は、情報Ⅱ、数学Ⅱ・数学B、数学Ⅲ・数学Cなどの履修を進めます。
  • 生徒は、数理・データ・AIを使い、実社会や実生活に関わる問いを調査し、分析した結果を表現します。
  • 学校は、大学や外部の専門人材と連携し、高校での学習を大学の専門分野へつなぎます。
  • 学校は、デジタルを活用した授業や課外活動に必要な設備と学習空間を整えます。
現行科目扱う内容の例DXハイスクールでの位置付け
情報Ⅱデータサイエンス、情報システム、情報デザイン、コンテンツ制作、プログラミングなどを「情報Ⅰ」から発展させます。選択科目の開設・履修、探究や大学連携へつなぐ取組が対象になります。
数学Ⅱ・数学B指数・対数、微分・積分、統計的な推測、数列など、データ分析やモデル化に関係する数学を扱います。情報・データサイエンスと関連付けた履修や文理横断的な学習を進めます。
数学Ⅲ極限、微分法、積分法を発展的に扱い、変化を数式で捉える力を深めます。理工・データサイエンス等へ進む生徒の高度な数学履修を支えます。
数学Cベクトル、平面上の曲線と複素数平面、数学的な表現などを扱います。シミュレーション、可視化、理工系の学習との接続を支えます。

現行課程の科目上表は2026年度に実施されている現行科目の概要です。DXハイスクールの事業資料は、これらの科目の開設・履修促進を取組例として挙げています。次期学習指導要領の科目構成は別途審議されています。[31][12]

年度によって補助上限額と採択区分が異なる

  1. 初年度・1,010校1校当たりの補助上限額は1,000万円
  2. 1,191校(前年比181校増)新規213校は上限1,000万円、継続978校は上限500万円。重点類型は加算あり
  3. 1,249校(前年比58校増)新規118校は上限1,000万円、継続2年目208校は500万円、継続3年目923校は300万円。重点類型は加算あり

出典:[10][11][32]

採択校数は、2024年度から2025年度に181校増え、2025年度から2026年度に58校増えました。2年間では239校、23.7%の増加です。一方、新規採択校は2025年度の213校から2026年度の118校へ減っています。

年度別の採択校数
2026年度の採択校数を100%とした横幅です。
2024年度に新規採択された区分の推移
2024年度に新規採択された区分と、後続年度の継続区分の校数を比較しています。2024年度を100%とすると、2025年度は96.8%、2026年度は91.4%です(文部科学省の掲載数値から計算)。

横棒グラフの出典:[10][11][32]

2025年度に新規採択された213校のうち、2026年度の「継続2年目」は208校で、採択数を比べると97.7%です。補助上限額は、新規採択時の1,000万円から、2年目500万円、3年目300万円へ変わります。年度、採択区分、継続年数を分けて読みます。

「情報Ⅱ等」の開設と履修

文部科学省の採択資料にある「情報Ⅱ等」には、共通教科情報科「情報Ⅱ」に加え、数理・データサイエンス・AIの活用を前提とした学校設定教科・科目、総合的な探究の時間、情報Ⅱの内容を含む職業系教科・科目が含まれます。

採択年度の資料「情報Ⅱ等」を開設済みの学校数採択校における対象生徒の履修率(各校の初年度申請時点)資料に記載された目標値(達成年度は採択区分別)
2024年度695校38.6%57.7%
2025年度842校38.0%63.2%
2026年度919校37.0%60.3%

出典:各年度の採択資料 [10][11][32]

数値の読み方現状値は各校が初めて申請した時点の値で、目標値の年度も採択区分ごとに異なります。3か年を推移として比較することはできません。

採択校で実施している内容

東京都立小岩高等学校情報Ⅱで年間を通したプロジェクト学習を行っています。生徒はローカルLLM、スポーツデータ分析、AIによる骨格分析、3Dモデリングなどから課題を設定し、生成AIも相談や情報収集に利用しています。
文部科学省の取組概要を見る

日出学園高等学校情報Ⅱの前半で、3Dプリンタによる製品開発、主成分分析、生成AIを用いたシステム構築、顔画像検出などの短い実習を行い、後半の卒業研究・卒業制作へつなげています。
文部科学省の取組概要を見る

大分県立情報科学高等学校防災を共通テーマとして、家庭科、情報科、商業科、保健体育科、数学科、理科、国語科などが特定の単元で連携しています。生成AI、Python、データ分析、GISを、各教科の内容と組み合わせています。
文部科学省の取組概要を見る

愛媛県立西条農業高等学校3Dプリンタ、レーザーカッター、高性能PCなどを整備し、アプリ開発、農産物のPR動画、気象と収穫量の分析、土壌センサーのデータ処理、AIによる生育予測、IoT機器のプログラミングなどへの活用を進めています。
文部科学省の事例紹介を見る

千代田区立九段中等教育学校小型PC、ネットワーク機器、3Dプリンタ、Python、生成AIなどを、生徒がプロジェクトの役割に応じて選択します。制作、通信設定、情報デザイン、進捗共有を一つの中長期プロジェクトとして進めています。
文部科学省の授業事例を見る

山梨県立笛吹高等学校生成AIを使った偽・誤情報の学習、地域特産品の新メニュー考案、AR地形模型、CGによる手話制作、3Dプリンタによる制作などを行い、教員研修も同時に実施しています。
伴走支援事業の実践報告を見る

情報Ⅱ・DXハイスクール実践事例一覧を見る → 文部科学省の2025年度事例集を見る ↗

事例の記載範囲各校の公表資料に記載された導入機器、授業内容、生徒の活動を整理しています。

これらの事例では、情報Ⅱ、探究、専門教科、他教科との連携に、導入機器とソフトウェアを組み込んでいます。生徒の調査、制作、分析、説明までを事例ごとに確認できます。

DXハイスクールの制度資料は、機器整備、情報・数学の履修、探究、外部人材、大学連携を一体として扱っています。高校で実データや社会課題を扱う経験は、大学MDASHが推奨する実データ・実課題の演習へ接続します。

事例集:[33]

制度上の内容と高校現場の実践を分けて読む

学習指導要領は、全ての学校が扱う内容と目標を示します。一方、全国大会の実践報告や調査研究は、授業時数、生徒の経験、共通テスト受験者の割合、教員体制などによって、実際の年間計画や重点が異なることを示しています。

年間計画の違い

全国高等学校情報教育研究会の2025年発表は、共通テスト受験率や生徒の状況が異なる4校の事例を示し、生成AI、外部サービス、学習動画、教材の精選など、授業時間を確保する方法も学校ごとに異なると報告しています。4事例の比較として参照します。[14]

指導と評価への不安

情報処理学会の実践論文は、2024年2~3月に教員・学校関係者462人を対象とした民間調査で、共通テストへの「情報Ⅰ」導入に86.7%が不安と回答した結果を紹介しています。調査対象、調査時期、回答者数とともに数値を示します。[15]

教科書間の用語差

情報処理学会の教科書用語リストは、検定済教科書の索引語を横断して整理しています。高校で扱う代表語を、大学側が既習内容の確認に使える資料です。[13]

講演での扱い文部科学省の資料は制度上の内容と政策の方向を示し、研究会・学会の資料は個別実践や調査対象の範囲で現場の状況を示します。両者を同じ種類の根拠として混ぜず、資料の対象と方法を添えて示します。

高校卒業後に引き継がれる学習内容

ここからは、公的資料に示された各学校段階の内容を、講演者が接続の観点から並べたものです。高校卒業後に大学へ進む学生や企業へ入る人は、制度上は「情報Ⅰ」を履修しています。その中には、中学校からプログラミングや情報技術を学び、高校でデータ分析、モデル化、情報デザイン、情報セキュリティを扱った人が含まれます。

探究活動やDXハイスクールでは、実データ、社会課題、大学・企業との連携を経験する取組も行われています。以下は、学習指導要領とMDASHモデルカリキュラムを接続し、学校段階ごとの発展を示した講演者の整理です。

制度上の学習経路をたどる仮想例

ここでは、現行制度で示されている内容を各段階で順に学ぶ一人の仮想的な学習者を置きます。扱う問題、データ、説明の根拠、成果物を段階ごとに発展させ、各学校で同じ題材を繰り返さない例です。

  1. 小学校情報を集め、整理し、伝える

    各教科の学習でICTを使い、必要な情報を選び、図や文章で表します。プログラミング体験を通して、意図した動きを実現する手順を考えます。

    情報活用能力・プログラミング教育
  2. 中学校情報技術で問題を解決する

    ネットワークを利用した双方向コンテンツや計測・制御の仕組みを設計・制作し、安全性や社会への影響を含めて評価・改善します。

    技術分野「D 情報の技術」
  3. 高校根拠を示して分析・設計する

    情報Ⅰの四領域を関連付け、データ分析、モデル化、プログラミング、情報デザインを問題の発見・解決に用います。

    共通必履修科目「情報Ⅰ」
  4. 大学実データを専門分野へ適用する

    MDASHのリテラシーレベルから応用基礎レベルへ進み、実課題・実データを用いて分析し、倫理・法・安全を確認した上で意思決定へ結び付けます。

    基礎情報教育・MDASH

制度上の学習内容:[1][2][6]

制度導入世代は2026年8月にどこにいるか

小学校は2020年度、中学校は2021年度から新学習指導要領を全面実施し、高校は2022年度入学生から年次進行で実施しています。開始年度が異なるため、2026年8月時点では、経験した制度の組合せが異なる世代が同時に在学しています。[16]

  1. 小学校新課程を6年間学ぶ最初の世代2026年8月は中学1年相当。2029年度に高校、2032年度に大学へ進む時期を迎えます。
  2. 中学校新課程を3年間学ぶ最初の世代2026年8月は高校3年相当で「情報Ⅰ」を履修中。2027年4月に大学進学期を迎えます。
  3. 「情報Ⅰ」を学んだ最初の世代2026年8月は大学2年相当。大学での基礎情報教育・MDASHの履修状況は所属校によって異なります。

MDASHの読み方MDASHは大学等が教育プログラムごとに申請し、認定を受ける制度です。プログラムの開始年度、履修時期、修了時期は大学とプログラムによって異なります。

中学校の先生にとって技術分野で扱う制作、計測・制御、双方向コンテンツが、高校の情報Ⅰへどう発展するかを確認する。

高校の先生にとって卒業後の大学教育や企業研修が、高校で扱った内容を前提に組まれ始めていることを確認する。

大学の授業担当者にとって情報Ⅰの理解を確認し、必要な復習を置いてから実データと専門分野へ進める。

企業の研修担当者にとってデータやプログラミングの経験を確認し、その結果に応じて研修内容を分ける。

研修・教材の構成

研修・教材では、最初に理解を確認し、その結果に応じて復習、標準課題、発展課題を組み合わせます。

  1. 最初に短く確認する:図の説明、簡単な操作、小さなデータの読取りなどで、用語を含む理解を確かめる。
  2. 復習と発展を分ける:基礎確認、標準課題、発展課題を同じ教材内で選べるようにする。
  3. 学校段階ごとに課題を変える:同じ題材でも、中学校は制作と技術評価、高校はモデル化と改善、大学は実データと専門分野への適用を中心にする。
  4. 既習事項を明記する:教材の冒頭に、前提となる内容、今回扱う内容、次の学習先を短く示す。
  5. 成果物を変える:操作手順の再現だけで終わらせず、説明、比較、判断、改善案などを成果として求める。

同じ題材を三つの学校段階で扱う例

以下は、学校段階による学習の違いを説明するために講演者が作成した教材例です。公的資料に掲載された授業案とは区別しています。共通の題材を「教室をより過ごしやすくするために、温度・湿度と利用者の感じ方を調べる」とします。

センサーは、温度や湿度などの物理量を、定めた時刻や場所で記録します。アンケートは、その場所を利用した人が暑さや過ごしやすさをどのように感じたかを回答します。両者は異なる種類のデータであり、測定条件と質問方法を確認した上で対応を考えます。

学校段階学習活動データの扱い成果物
中学校温度・湿度センサーを接続し、決めた時刻と場所の値を記録する仕組みを制作します。短いアンケートも実施し、結果を見やすいグラフで表します。センサーの仕組み、安全な接続、測定条件、表示方法を確認し、制作した仕組みを評価・改善します。測定・記録する仕組み、結果を示すグラフ、改善点を説明する短い記録を作成します。
高校時刻、場所、温度、湿度、アンケート回答を一つのデータとして整理し、複数の変数の関係を分析します。データの尺度、欠損値や外れ値、代表値、散布図、相関を扱います。質問方法による偏りにも注意し、結論をデータから説明できるかを検討します。分析結果を示すレポートまたはダッシュボードを作成し、分析の限界を明記した上で改善案を示します。
大学実際の学内環境データに、在室状況やエネルギー使用量などを加え、専門分野や施設運用上の課題として分析します。データの前処理、分析方法の選択、再現可能な手順、プライバシーと研究倫理を確認し、結果を意思決定に結び付けます。再現可能な分析資料を作成し、根拠、限界、実施条件を伴う運用改善案を示します。

三つの学校段階で題材は同じですが、中心となる学習は異なります。中学校では情報の技術を用いた仕組みの制作と評価、高校ではデータの科学的な解釈と説明、大学では実データを用いた専門的な分析と意思決定を中心にします。

講演の結論

中学校・高校・大学の情報教育では、共通する題材を扱いながら、学習の中心を段階的に発展させています。中学校では情報の技術を使った制作と評価、高校では情報の科学的な理解、モデル化、プログラミング、データ分析、大学では実データと専門分野を結び付けた分析と意思決定へ進みます。

高校「情報Ⅰ」は、中学校での制作や問題解決の経験を、大学の基礎情報教育やMDASHへ接続する位置にあります。四領域を個別に扱うだけでなく、問題の発見・解決の過程で組み合わせることにより、高校での学習が前後の学校段階とつながります。

情報・技術で扱うデータ、メディア、プログラミング、ネットワークは、総合的な学習・探究の時間で課題を設定し、調査し、成果を表現・改善する際にも使われます。本講演では、この接続を中心に、学校段階を越えて学習内容を組み立てます。

2026年度の学校には、旧課程、現行課程、移行期を経験した生徒・学生が在籍しています。教材、授業、研修を設計するときには、対象となる学年が小学校・中学校・高校で適用された課程を踏まえ、次の学校段階で扱う内容まで見通して構成することが必要です。

補足章 国語・数学・理科・社会との接続

ここまでの本編では、情報・技術を中心に、総合的な学習・探究の時間との関係も含めて学校段階の接続を整理しました。この補足章では、国語、算数・数学、理科、社会との接続を別に整理します。

2026年8月4日の教育課程企画特別部会では、各教科等ワーキンググループの取りまとめ案と、教科横断で資質・能力を整理する資料が示されました。言語能力と情報活用能力は、学習の基盤として相補的に働くものとして整理されています。[24][26]

  1. 集める
  2. 比較・分類する
  3. 信頼性を確かめる
  4. 分析・モデル化する
  5. 表現する
  6. 評価・改善する

国語科と情報科の接続

国語ワーキンググループの取りまとめ案は、「情報の扱い方」を、情報相互の関係を吟味して整理する力と、情報の信頼性・妥当性を見極める力として発達段階に応じて示す方向を整理しています。複数の情報源を読み、主張と根拠の関係を確かめ、考えを表現する学習です。情報科では、データやメディアの特性、情報技術の仕組みを理解し、収集・分析・表現・評価の方法を扱います。[27]

国語科言葉によって情報を理解し、関係や信頼性を吟味し、根拠をもって表現する。
情報科データ、メディア、計算、ネットワークの特性を踏まえ、情報技術を問題解決に活用する。

接続する学習複数資料の比較、出典の確認、データの読取り、主張と根拠の構成、結果の発信と改善

各教科から大学・社会へ続く学習

教科・領域その教科で扱う学習情報活用との接点大学・社会での展開
国語言葉による理解、思考、対話、表現情報の関係と信頼性を吟味し、主張と根拠を構成する文献調査、レポート、発表、情報源の評価
算数・数学数量、図形、変化、データを数学的に捉える統計的な見方、数理モデル、結果の解釈数理・データサイエンス、予測、意思決定
理科観察・実験を通して自然の事物・現象を探究する測定、データ整理、仮説の検討、シミュレーション実験データの分析、科学的研究、専門分野への応用
社会資料を基に社会的事象を多面的・多角的に考察する資料や統計の比較、情報源の確認、根拠に基づく判断社会調査、政策・地域課題の分析
総合・探究問いを見いだし、知識や方略を使って探究する教科の知識と情報技術を組み合わせ、試行錯誤するPBL、研究、地域・企業と連携した課題解決
情報・技術情報技術の仕組みを理解し、設計・制作・分析・評価するデータ、メディア、プログラミング、ネットワークを体系的に扱うMDASH、情報学、専門分野でのデータ・AI活用

出典:各教科の審議状況 [25]、教科横断の整理 [29]

この表は、2026年8月4日までの各教科等ワーキンググループ資料を基に、講演で教科間の接続を説明するために整理したものです。各教科の取りまとめ案は審議中です。

講演者の過去発表資料

一次資料

最終確認:2026年8月6日